研究では、イマジナリーフレンドを持つ人はそれ以外の人と比べて心の理論の正答率が高いことが報告されています。
しかし、心の理論の正答率が低いとされる自閉症スペクトラム障害などを持った人がイマジナリーフレンドや思念体を持たない、あるいは持てないという訳ではありません。
ここではイマジナリーフレンドや思念体と心の理論の関係について考察していきたいと思います。
心の理論が一般以上に発達している人は、相手の細かな心情を読み取ることに長けています。
この事から、自分の想像内で完結する思念体においても現実味のある心情を持たせることが可能ではないかと考えられます。
例えば、人が関わる小説を書く時には、登場人物の細かい心情を描写する能力が必要とされています。この際に心の理論の高い人は各場面において登場人物の心情をリアルに想像することができます。
この小説を書く時の想像と思念体を作る時の想像は非常によく似ています。
一般的に人物の想像と言えば容姿のみならずその人の性格の把握やそこからの行動予測も含まれるため、それらの予測能力の正確性が『心の理論』ではないかと思われます。
思念体を作るための能力の一つに「現実的な心の働きをする人を想像できるか」が含まれるのであれば、思念体を作るために高い心の理論は有利になってきます。
一般的に想像上の友人は心の理論が高い人がつくる存在だと考えられているのでこのような考察をするのは稀有かもしれません……。
心の理論が低い障害として自閉症スペクトラム障害が挙げられますが、最近の研究では自閉症スペクトラム障害は心の理論を全く持たない訳ではなく独自の心の理論を持つことが分かってきています。つまり、どんな心の理論が低い人でも独自の心の理論を持っているのです。
心の理論は思念体作成において思念体の性格の把握や行動予測に使われます。
心の理論の高さはその人が持つ心の理論と一般的な常識の一致性を表すものですから、心の理論が低い人の作る思念体は客観的に見ると非常識と捉えられる可能性が十分にあります。しかしそれはその人にとってごくありふれた振る舞いなのです。
自閉症スペクトラム障害においては、定型発達者の心情を理解することが困難ながら、同じ自閉症スペクトラム障害を持つ人に対して共感など心情の共有ができることが明らかとなっています。
心の理論が高い人は多くの人と共通の心の理論を持つため多数の心情の理解が可能で、逆に心の理論が低い人は自分と同じ心の理論を持つ人に巡り会えないため「心の理論を持たない」などという誤解が生じるのではないかと思われます。
この事から “心の理論” と “思念体” の関係性について、人は人物を想像する際に自分と同じ心の理論を持った人を想像するのではないかと推測できます。
つまり心の理論が低い人のつくる思念体の常識観のズレは保持者の心の理論と常識的な心の理論とのズレを示しているのです。